電波伝搬異常解析

本研究テーマは、放送波やGPS波を観測してその変動を解析し、地震発生との関連性を 調べることで短期地震予測につなげることを目的とした研究です。
一般に、地震予知は不可能であると言われていますが、最新の地震前駆現象に関する研究結果から、 地震発生の数週間〜数時間前には電波伝搬に影響を及ぼすような地球規模の電磁気現象が起きている らしいことが分かってきました。
当研究室でも放送波やGPS波の状態を解析することによって地球規模で起きている電磁気現象の異常を検出し、 それを用いることで地震発生を予測する試みを研究テーマとして取り組んでおります。
具体的には、下記の3つの電波観測結果から地震に先立って発生する異常現象を検出し、地震との 関連性を解明しようとする研究テーマです。

○ 見通し内VHF帯放送波伝搬異常と地震発生との関連性解析
VHF帯(Very High Frequency:超短波帯)の電波は、地球上空の電離層を突き抜けて飛び去ってしまいますが、 放送局から見通し内(地平線の手前まで)のエリアでは常時受信することができます。 しかし、気象やその他の様々な影響によって受信波の強度には変動が生じます。
本研究テーマでは、見通し内に存在する放送局からのVHF帯放送波(主にFM放送波:76〜90MHz)を常時受信し、 その異常変動と地震発生との関連性を探究しております。
今までの研究結果から、マグニチュード4.5以上、震源の深さが50km以浅、電波伝搬路から震央(震源真上の 地表点)までの距離が100km以内、の3条件を満たす地震が発生する場合、地震発生の数日〜数時間前に 受信電波に異常変動が現れやすいことが分かってきました。
地震発生前に必ず電波の異常変動が現れるわけではありませんし、また電波の異常変動後に必ず地震が発生する訳でも ありませんが、確率を計算すると両者の間に関連性が存在する可能性が高くなっています。
上記の"DATA"メニューを選択すると、本研究室の自動電波観測装置で受信した電波の状態を 見ることができます。


○ GPS波を用いた電子層内電子密度分布解析
カーナビやスマホの現在位置検出技術として、GPS(Global Positioning System:全地球測位システム)が 利用されています。 GPSは、高度約2万km上空の円軌道を周回する複数のGPS衛星からの電波を受信し、その電波の到達時間差から 受信機の位置を割り出すシステムです。
ところで、地球上空の大気圏と宇宙空間の境には希薄な大気が存在しますが、太陽光によって希薄大気から電子が 電離することで電離層が形成されています。この電離層は、地球上空約70km〜約500kmに存在しています。 (夜間は約100km〜約500km)
このため、GPS衛星から送出された電波は地上のGPS受信機に届く前に電離層中を通過しますが、電離層中に 電子が存在することによって、電子密度に応じた伝搬遅延を生じます。 この遅れ時間はGPS受信機の位置情報に誤差を生じさせますが、この遅れ時間をうまく利用すると電離層中の 電子密度を予測(計測)することができます。
近年の研究から、大きな地震が発生する前(数週間〜数日前)に電離層中の電子密度に異変が表れることが 分かって来ました。そこで本研究テーマは、国土地理院が公表しているGPS波観測データを用いることで、 電離層中の電子密度分布を精度良く予測することで異変を検出し、その異変と地震発生との関連性を追求しています。

○ 日出・日没時の中波帯放送波変動解析
工事中!!