近傍電磁界計測による放射パターン推定法
研究者 河野 圭

通常の放射パターン計測では、被測定アンテナと計測用プローブの間隔を10メートルあるいは3メートル(通常この様な測定を行なうに当たって、ある程度決まった距離)として、被測定アンテナを回転させながら電界強度を測定する方法が用いられています(従来方法)。しかし、数メートルから数十メートル以上の電波暗室や、周囲に障害物がない様な空間が必要となりいつでも手軽に計測出来る訳ではありません。。。。。。





ところが本手法(“結合解法”と言う)を用いる事により、被測定アンテナと計測用プローブの間隔が数cm程度でもアンテナの放射パターンが得られる(近傍界 → 遠方界変換)、という事が本テーマの特色となっています(本テーマでは使用周波数を2.45GHzとしました。これは、無線LANの使用周波数に当たります)。その具体的な手法についてですが、

1.まずアンテナの周りに“仮想的な境界円”を考える。

2.その仮想境界円上での電界を“ベクトルネットワークアナライザ(周波数を基準とし、位相差と振幅を測定する事が出来る測定器)”を用いた実験で測定する。具体的には、ネットワークアナライザの片側のポートを被測定アンテナ、もう片方のポートに計測用プローブを接続し(今回は2端子のネットワークアナライザを用いている)、その空間を伝送する電界の“振幅”と“位相差”を測定する。

3.遠方における放射電界を円筒関数(ハンケル関数)で表現し漸近展開を適用。



4.仮想境界円上における計測電界に対して境界条件を適用することによってマトリクス(複素マトリクス)を形成し、これを解く事により未定係数 を求める。


5.先ほど求めたを以下の(4)に代入する。それにより、放射指向性 が求められる。


本テーマではこの結合解法によって求められた結果と、従来方法を用いて放射指向性を求め、結果の比較実験を行っています。その事に拠って、本手法の正当性を確認する事を目的としています。この方法で得られた放射指向性図と、従来方法の放射指向性図の比較図を以下に示す。(1λ=12.2cm)

上図の様に結合解法を使っても、放射指向性が求められる事が分かります。

おまけ
本島研が誇る、測定器“ネットワークアナライザ!!!”